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ねぎとろ丼

ねぎとろ丼

雛祭りを題材に

※雛まつりー と 雛ぱちゅりー は似てる
 そう思って、「雛ぱちゅりー」を題材にしてみたものです


 雛祭りの日。パチュリーは友人知人達と居らず、一人幻想郷をさ迷っていた。
 たまには一人で過ごすのもいいと思って、出かけたのである。
「あかりをつけましょ、ぼんぼりに……」
 人里からは子供達の歌声が聞こえる。少女達が歌う、雛祭りの歌。
 パチュリーも一人の少女。こういう行事は嫌いではない。
 ただ、人より少し長く生きたパチュリーはいつもと違って、ひっそりとした雛祭りを楽しみたいと思ったのである。
 懐から包みを開ける。紅魔館で行われている雛祭りのひな壇から失敬した、雛あられと菱餅。
 お茶も無しにそれを川岸でつまみ、一人で雛祭り。せせらぎをBGMに、一人で歌を口ずさむ。
「あかりをつけましょ、ぼんぼり……に」
 一人の雛祭りをパチュリーは寂しいとは思わず、これも一興だと楽しんでいた。
「おはなをあげましょ、もものはな」
 パチュリーの声に続いて、別の声が歌を引き継いだ。
 振り向くと、澄ました一人の少女がいた。パチュリーと同じく、一人ぼっちの女の子。
「はじめまして。珍しいわね。人間? それとも妖怪かしら」
「惜しいわね。妖怪の魔法使いなの」
 パチュリーに寄ってきた少女は鍵山雛と名乗った。
「私は厄神なの。えんがちょの向こう側にいるから、あまり他人に近づかない方がいいんだけど……」
「雛祭りが気になったの? それとも、もしかして貴方は雛祭りの神様だったりするの?」
「そんなことはないわよ。ただ、こんなところで一人でいるあなたが気になったの」
 パチュリーは包みを彼女に差し出し、雛祭りに誘った。
「……厄神様は、雛祭りしないんですか?」
「皆を不幸にする恐れがあるから、それはちょっとね……」
 パチュリーは押し付け気味に雛あられを渡した。
「私は、今日たまたま一人ででかけたんです。私には友達が一杯いますけど、今日は一人で雛祭りを過ごしてみたいと思ってここまで辿りついたんです」
「どうしてその者達とお祭りしないの? 喧嘩でもしたの?」
「……本当に、気まぐれなんです。なんだか、抜け出してるみたいで今後悔しています。一人でしか居られない貴方にも、悪い気がしますし」
「誰かと居られるのに、あえて一人でいるのが贅沢みたいだから?」
「ええ、はい……」
 彼女は雛あられを一つつまみ、微笑んだ。俯くパチュリーに、優しく囁きかける。
「ありがとう。今こうして貴方といることが、とても楽しいわ」
「厄神様……」
「行きなさい。きっとあなたのお友達が、待っているわ」
「ええ、もう行くことにします」
 パチュリーが再び口ずさみ、歌を続ける。
 はるのやよいの、このよきひ。雛に会釈をして、紅魔館を目指した。
 なによりうれしい、ひなまつり。歌を締めた彼女は、残った雛あられをかみ締めた。

 人里の子供達が歌う。妖怪達も歌う。神々も歌った。
 今日は雛祭り。子供のためのお祭り。少女達のためのお祭り。
 雛は一人、それらを見守続ける。このお祭りを、全ての者達に楽しんでもらうために。

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